長い前髪の隙間から眼光がきらりと光る

カウンセリングを受けていた。何か大病を患ったわけではない。体は健康。どうやら事故のショックを和らげるために受けているらしい。

メインの医者はレモン農家のあの人。助手は初老の男性。鮮やかなグレイヘアを丁寧に手入れして、顔の皺も上品だった。カウンセラーでなくバーのオーナーをしたほうがいい気がする。

「なるほど。それじゃ次が最後の質問ね」

先生のほうがカウンセリング受ける側な気がするが、あえて言わなかった。彼は一筆便箋サイズの紙を出しサラサラと穴開きの文章を書いた。

「君はこれをどう完成させる?」

私はそれを見つめる。手元にある鉛筆(2B)を手に取り空欄を埋めた。何を書いたかは分からなかった。先生に渡すと「ふうむ」長い前髪の隙間から眼光がきらりと光った。

「ありがとう。これで終わりです」

 

その日のカウンセリングは終わった。

どこかで聞いたことあるクラシックメロディが薄く私の入院するフロアに流れる。

数日後、机の上にクリアファイルが置いてあった。先生からの返事。喜怒哀楽の感想より、この話を終わらせなくちゃって苦痛でない使命感になって、黄緑ボディの万年筆を手に取った。

 

そこで目が覚めた